医療情報について

医療情報の提供の仕方から病院の姿勢を読み解く

【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 患者に配慮した情報提供を行っている(2) わからないことをいつでも聞ける態勢がある (3) 苦情の回答を開示している(4)患者との情報の共有化がみられる
坂本憲枝(さかもと・のりえ)さん
日本女子大学卒業後、特許や利用者サービスに関わる仕事を経て、1991年より消費生活アドバイザーとして活動を開始。2005年、東京大学医療政策人材養成講座の研究で、都内300床以上の89病院を対象に医療情報提供の実態調査を、患者の視点から行い話題を呼ぶ。医療グループあすか代表、日本医療機能評価機構評価委員など。
なぜ、病院の医療情報提供の実態調査をしたいと思ったのですか。
  私たちが病気になったとき、まず知りたいのは「医療情報」ではないでしょうか。どこの病院で、どんな専門の医師に、どのような治療が受けられるか、どれくらいの時間と費用がかかるのか。できるだけ多くの情報を集め、よりよい病院を選びたいと願うでしょう。
病院が発信する医療情報は、駅の看板や電柱広告のほかにパンフレット、院内掲示、ホームページ、さらには口コミなど、さまざまな媒体から発信されています。しかし、これらの情報の中には、医療の受け手が病院を選ぶ際に決め手となる十分な情報が盛り込まれているでしょうか。それを確かめたい、というのが調査の出発点です。
今回の調査からどのようなことがわかりましたか。
それぞれの病院が発信する情報の内容や質には、明らかな格差がありました。つまり、医療情報の提供に関してもよい病院とそうではないと思われる病院がある。さらに、患者の求める情報と病院が提供する情報にはミスマッチがあり、それを解消するための取り組みが少ないこともわかりました。たとえば、待合室の院内掲示調査では、診療科や案内、個人情報の取り扱いなど基本的な情報はある程度入手できるのですが、医師の専門性などの情報、カルテ開示やセカンドオピニオンなどの情報、文書作成や入院などにかかる費用についての情報は少ないか、掲示していても患者側にわかりやすく情報提供されていません。
 病院を選びやすくするために、国では2004年3月に医療機関広告の規制緩和を行いました。しかし残念ながら、患者が知りたいと思うような情報の提供は少しも進んでいないのです。このような背景には「患者が必要とする情報を、患者に確実に届け、理解につなげよう」といった、病院の認識が低いことが強く影響していると思います。
「医療情報の提供」の観点からみた"よい病院"とは?
  患者にとってよい病院とは、「患者のことを大切にしてくれる病院」です。医療の技術については明確にわからない状況を踏まえた上で「患者のことを大切にしてくれる病院」かどうかを見抜くためには、病院の姿勢を読み解くことが必要です。それは医療情報の提供の仕方にも表れています。いくつもの病院の待合室を調査して思うのは、患者に配慮して情報を伝えようとする病院は、それなりに患者のことを考えている医療機関だということです。たとえば、大きな文字でわかりやすく掲示文が書いてある、患者が気づきやすい場所に掲示してある、患者がわからないことをいつでも聞ける態勢がある、苦情の回答を開示している、などです。なかでも苦情の回答の開示は、病院の声を患者に伝える有効な手段であり、透明性にもつながると思うのですが、私たちの調査で、それを実施している病院は89病院中35病院、300床以上の大病院でも約4割しかありませんでした。
 いずれにせよ、病院の姿勢を患者に的確に伝えられる病院というのは、きちんとした医療を提供しようとする意思や姿勢があるということ、またそれが病院の総合力であるとも思います。
医療情報の提供が進んでいないなかで、どのように医療情報と向き合えばいいですか。
  今回の実態調査を通して、医療機関には「いかに患者が本当に必要とする情報を出してこなかったか」ということに気づいてもらえたのではないかと思います。この事実を踏まえたうえで、患者が欲しいと思う情報を、いつでも簡単に入手できる環境づくりに努めていただきたい。私が考える患者中心の医療とは、患者が病院や治療方法を選択するための情報を求めたときに、それなりの判断ができ、期待される結果につながっていくこと、つまり、患者にとって医療の方向性や道筋が見えることでないかと思っています。そのためには病院が提供する医療情報は不可欠であり、非常に重要なものです。
 同時に、私たち患者も病院から必要な情報を入手する力、情報を読み解く力、医療者とのコミュニケーション力をつける必要があるでしょう。医療情報は、私たちに不安と安心を同時に与えます。きちんと系統立った「線」のような情報であれば、私たちはそれなりに理解して安心につなげることができるのですが、現在、提供されている情報のほとんどは「点」のようなものです。たとえば医療事故にしても、センセーショナルな情報のみが伝えられ、起こった原因やその後の改善、対応についての肝心な情報が得られません。このように情報が「線」としてがつながっていかないことが私たちの不安を増大させています。
また、一般的に患者は医師に関心を示しますが、病院は組織で動いています。そのため、医療機関が持つ機能や医療システムについて系統的に知ることも大切です。このような知識や情報がないと、病院をうまく使いこなすことはできません。
医師や病院との付き合い方のポイントとは?
  診察を受けるときに、まず「伝える」ことが大事。いつから、どのような症状でつらいのか、患者からの訴えがあって、医師は初めて診断ができるわけですから、自分なりに工夫して伝えなくてはなりません。そして、医師からの説明はきちんと「理解する」よう努めること。わからなければ何度でも「聞いて」、自分の病気について知識を「集める」ことも必要です。納得する医療を受けたいのなら、医師との情報の共有化は欠かせません。それがなければ"おまかせ医療"になってしまいます。患者側もこのような努力をしなければ、医師とはうまく付き合えないと思います。そして病気が治ったら、きちんとお礼を言うことも大切。一方通行でない関係を「築く」ことが、患者と医師のよい人間関係を作り上げるのです。
 また、病院との付き合い方のコツは、普段から自宅の近くにどのような機能を持つ病院があるのか、救急も含めて確認しておくことです。このような病院情報を自身が把握していないから、いざというときに、どこに行ってよいかわからず慌てるのです。これからは患者自身、自立した消費者として医療を捉えなおす必要があるでしょう。
 
構成・文/渡辺 千鶴
病院探しのコツ
医療情報について
 

医療情報の提供の仕方から病院の姿勢を読み解く【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 患者に配慮した情報提供を行っている(2) わからないことをいつでも聞ける態勢がある (3) 苦情の回答を開示している(4)患者との情報の共有化がみられる