医師と患者の意識ギャップについて

理想の病院に求められるのは患者の声を積極的に取り入れる姿勢

【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 患者の満足度を重要視している。 (2) 対話をベースに、患者と医師の信頼関係を構築できる。 (3) 薬についての説明に重点を置いている。
左:野林晴彦(のばやし・はるひこ)さん
右:藤原尚也(ふじはら・なおや)さん

医薬産業政策研究所とは?
医薬産業政策研究所(政策研)は、製薬産業を取り巻く環境および製薬産業の中長期的な課題について分析検討し、提言を行う研究機関です。
野林晴彦
1988年筑波大学第二学群農林学類卒業、同年エーザイ株式会社に入社。医薬事業部MRを経て、99年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。その後、本社知創部にて人材開発や理念浸透に関わる業務に従事。03年4月、日本製薬工業協会医薬産業政策研究所主任研究員に就任。

藤原尚也
1992年立命館大学法学部卒業、同年中外製薬株式会社に入社。営業業務部、流通政策部にて、市場分析や価格政策に関わる業務に従事。2001年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程に入学、03年修了。同年4月、日本製薬工業協会医薬産業政策研究所主任研究員に就任。

大切なのは「説明とスキル」より、「専心と思いやり」

野林さんと藤原さんは、患者の意識調査を中心に研究をしていますが、その目的は?
  野林さん 私たち日本製薬工業協会は、患者中心の医療に主体的に関わっていきたいと考えています。そのためには、患者中心の医療がどの程度実践されているかについて調査を行う必要性があると考え、2004年から取り組み始めました。
2004年、2005年と2度にわたり調査をしたそうですが、その結果わかったことを教えてください。
  藤原さん まず最初に行った調査では、一般生活者842人、患者会767人を対象に、病気や薬についてどのように考え、どのように行動しているのかに関する質問を組み立てました。その結果、医療の情報収集は、年齢が高くなるにつれて新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどのマスメディアからの情報収集が多いのに対し、若年層、特に30代では、インターネットから情報を収集している人が多いことがわかりました。また、「家族や友人からの口コミ」も重要な情報源となっています。医療に関心を持つきっかけとしても、「自分や家族が病気になったこと」が最も多く、「家族の健康」が医療への関心に大きく関与するようです。

患者さんとの信頼関係づくりに努力する医療機関が理想

2004年の調査結果をもとに、さらに研究を深めるため、「医師と患者の意識のギャップ」について調査する必要性を感じたそうですが、それはなぜですか?
  藤原さん 医療は、医師と患者さんのコミュニケーションです。しかし初回の調査では、患者側の意識しか調べておらず、やはり医師側の意識も調べる必要があると考え、2回目の調査では、医師にも回答に協力してもらいました。その結果がこのグラフ(右:図1)です。これは医師の「考え方」「態度」「説明能力」「診察環境」について医師と患者さんがそれぞれどう思っているかを調べたものです。これを見ると、「診察環境」以外は、すべて「医師が思っているほど、患者さんは満足していない」ことがわかります。つまり医師側は「患者さんの意思を尊重し、患者さんのことを考えた態度で接し、質問や説明にも親切、ていねいに対応している」と考えていますが、患者さん側はそのようには認識していないのです。さらに、両者が一致したのは、「十分な診察時間がない」、「プライバシーの保護に関して問題がある」というマイナス要因でした。また、このグラフ(右:図2)のように、「治療方法や薬剤を選択する時の意思決定」でも、医師と患者さんに大きな意識の隔たりがあることがわかります。  
図1
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図2
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この調査結果を見て、患者さんにとって満足度の高い医療サービスとは何かと考えた時、最も大切なポイントは?
  野林さん 医療サービスを提供する医師や病院側が、患者満足度の現状を真摯に受け止めて、改善するように努力する、歩み寄る姿勢が大事だと思います。いい病院を探すポイントとしては、マニュアル化した対応や、通り一遍の説明ではなく、患者さんとの信頼関係を構築していくため、思いやりのある医療サービスに努力を惜しまない姿勢が、重要だと思います。
  藤原さん 薬の説明や、薬の選択は、患者さんの関心が高く、なおかつ満足度はあまり高くないですね。やはり、生活習慣病のような慢性疾患の場合は、薬を飲むことが重要な治療法となるので、患者さんとしても十分説明を理解して、安心して飲みたいと思うもの。この点を配慮した病院もいい病院と言えるのではないでしょうか。
構成・文/宇山恵子
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医者と患者の意識ギャップについて
 

理想の病院に求められるのは患者の声を積極的に取り入れる姿勢【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 患者の満足度を重要視している。 (2) 対話をベースに、患者と医師の信頼関係を構築できる。 (3) 薬についての説明に重点を置いている。