医師の視点から

自分と家族の医療情報を一元管理する「かかりつけ医」を探すこと

【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 家族の「かかりつけ医」になる病院 (2) 人間的な付き合いができる医師 (3) 医師と自分の相性が合うことが大切
黒川清(くろかわ・きよし)さん
1937年東京生まれ。成蹊中・高校を経て、62年に東京大学医学部卒業後、68年同大学医学部第一内科助手。69年に渡米し、ペンシルバニア大学助手を経て、米国で内科専門医の資格を取得し、UCLA医学部内科教授となる。89年より東京大学医学部第一内科教授、96年に東海大学医学部長を経て、97年に、東京大学名誉教授。2003年より日本学術会議会長、04年より東京大学先端科学技術センター客員教授となる。
黒川清先生の個人ホームページ

競って大病院に行くのが混雑の原因近所の「かかりつけ医」でまず診断を

患者さんの不満には、「待ち時間が長く、診察が短い」という意見が多いのですが、これについてどう思いますか?
軽い病気で、大学病院に行ったりしないことです。風邪やちょっとした体調不良であれば、近所の「かかりつけ医」で問題はありません。
日本は、医療のフリー・アクセスが行き届き、軽い病気でも、誰もが大きな病院に行ってしまう傾向があります。すると何が起こるかというと、大学病院などが、外来患者だけで満員になってしまい、入院患者や救急医療もあって忙しいのです。また、殺到している外来患者さんの不満も募るばかり。フリー・アクセスが、逆に悪いスパイラルを作り出しているようですね。
では、やはりこの不満を解決するためには、まずは近所の医師のところに行くべき、ということですね?
  はい。自分や家族の医療情報を一元的に管理してくれるホーム・ドクター、つまり「かかりつけ医」を持つことが大切だと思います。具合が悪くなったら、まず近所の「かかりつけ医」に相談する。そうすれば、大病院の大混雑も緩和されるはずです。

ネットや口コミで情報収集し軽い病気の時に、様子を見に行く

「かかりつけ医」のメリットについて教えてください。
  具合が悪い時、「お腹が痛いから内科へ行こう」、「腰が痛いから整形外科へ」などと、自分で勝手に自己判断して医者に行く場合が多いはずです。でも、それは医療のプロが判断していないので、正解ではない可能性も多い。これは、ものすごく時間とお金、つまり医療費のロスです。
医療費の一部は、社会全体が負担しているもので、それを無駄づかいすることは、国家財政にも関わる大きな問題です。つまり、医療は、一人ひとりの健康という観点と、社会全体の問題という観点で見なければなりません。このような、大きな無駄をカットするためにも「かかりつけ医」はとても有効です。 例えば、具合が悪くなった時、なんでも相談できるかかりつけの医師に、何科に行けばいいか相談したり、紹介状を書いてもらったりすれば、アマチュアの判断で、まちがった診療科目を選んで、もう一度診察してもらう、という手間はなくなるはず。
 
「かかりつけ医」をうまく探す方法はありますか?
  「かかりつけ医」を探すのだったら、具合の悪い時に限らず、普段から地域の病院についての評判などをインターネットや口コミなどで調べて、具合がひどく悪くない時にでも、「医師と自分の相性」を確かめに行くのもいいでしょう。
それでは「かかりつけ医」との付き合い方について、アドバイスしてください。
  自分と家族の大切な「健康と命」を委ねる人だから、自分の価値観や人生観を理解してもらい、できれば家族ぐるみで、長く付き合えるように、日頃から人間的なお付き合いができるのが理想的ですね。
根気よく医院情報を集めて、何回か訪れてみるとか、評判を聞いてみるなどして探せば、きっと自分に合った医師が見つかるはずです。私の妻も、自分で「かかりつけ医」を探して、よく予防接種や健康相談に行っていますよ(笑)。
われわれ日本人も「村民意識」を脱却し、「自分の行動は、自分で責任をとる」というマインドを持ち、国まかせ、他人まかせではない医療との関わり方を、始めるべきではないでしょうか?
構成・文/宇山恵子 , 撮影/井原淳一
病院探しのコツ
医師の視点から
 

自分と家族の医療情報を一元管理する「かかりつけ医」を探すこと【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 家族の「かかりつけ医」になる病院 (2) 人間的な付き合いができる医師 (3) 医師と自分の相性が合うことが大切