虚血性心疾患

虚血性心疾患


心筋が酸素欠乏を起こす病気

収縮、拡張を絶えずくり返す心筋は、安静時でも、ほかの組織よりはるかに多量のエネルギーを必要とします。このエネルギー源となるのは、ブドウ糖、乳酸、脂質(脂肪酸、中性脂肪)などですが、これらの物質は心筋収縮に必要な機械的エネルギーと心臓が生存し心運動に対応するために使われます。特に、機械的エネルギーとしての化学的エネルギーに転換するためには十分な酸素を必要とします。心筋は、この大切な酸素やエネルギー源を冠動脈を介する血流により供給されます。

したがって、この唯一の供給路である冠動脈のどこかが狭まったり詰まったりすると、心筋への血流量が不足(虚血といいます)してきます。虚血の状態になると、組織に蓄積できない酸素が真っ先に利用できなくなり、心筋は酸素欠乏に陥って、はたらきが障害されます。このような心筋の虚血により障害が起こった状態の心臓病全般を、虚血性心疾患(虚血性心臓病)と呼び、狭心症と心筋梗塞[しんきんこうそく]がその代表的なものです。虚血性心疾患は、冠動脈疾患や冠動脈性心疾患などと呼ばれることがあります。

最大の原因は冠動脈の動脈硬化

心筋が虚血を起こすような状態はいろいろありますが、もっとも多い原因は、冠動脈の動脈硬化(粥状硬化[じゆくじようこうか]あるいはアテローム硬化)を基盤とします。すなわち、冠動脈硬化病変(粥状硬化あるいはアテローム硬化)の粥腫損傷[じゆくしゆそんしよう]とそれに基づく血栓[けつせん]形成が主体となり、前からある狭窄[きようさく]の程度は軽くても、急激に冠動脈を狭めると狭心症が多発し、その程度が強まると心筋梗塞[しんきんこうそく]になります。そして、このような急性の虚血発作に伴って各種不整脈、心ポンプ失調、心破裂などが起きると、心臓性突然死につながります。現在では、狭心症、心筋梗塞および突然死をひとつの病態にまとめて急性冠症候群と呼びます(図4―14)。

冠動脈硬化の程度には個体差はありますが、一般に加齢とともに進む性質のもので、虚血性心疾患は普通40歳以上の年齢層に発症します。

最近、わが国における3大死因のうち、心臓病が脳血管障害(脳卒中)によるものを上回って、悪性新生物(がん)に次いで第2位を占めるようになりました。その大きな理由は、人口年齢構成の高齢化に伴う虚血性心疾患の増加にあるのではないかとみられています。