アルツハイマー型痴呆、脳血管性痴呆[のうけつかんせいちほう]

高齢者の認知症(痴呆症[ちほうしよう])は、さまざまな原因によって起こりますが、もっとも多いのはアルツハイマー型痴呆脳血管性痴呆です。この2つの病気で、認知症高齢者の75〜80%を占めています。

【アルツハイマー型痴呆】

アルツハイマー型痴呆*は、はっきりした原因は不明ですが、脳の神経細胞が急速に減少し始め、脳が萎縮[いしゆく](容積が小さくなる)し、その程度がひどくなると起こってくる病気です。男性より女性に多くみられます。

アルツハイマー型痴呆

老年期に好発する原因不明の認知症を起こす病気をいいます。初老期に発病するアルツハイマー病と老年期に発病する認知症は同じ病気と最近では考えられるようになり、両者を併せてこのように呼ぶようになってきています(なお前者を早発型、後者を晩発型と分けています)。わが国では認知症疾患の中で脳血管性痴呆とともにもっとも多い病気です。

【脳血管性痴呆】

脳血管性痴呆は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞[のうこうそく])、あるいは血管が破れたり(脳出血[のうしゆつけつ])すると、その部分の脳の組織が障害を受け、それらの障害が広範囲に及ぶと起こってくる病気です。女性より男性に多くみられます。

おもな症状


この2つの病気の症状は多少異なりますが、おもな症状は次のとおりです。

知能が低下してくる

記憶、特に最近の記憶が悪くなり、忘れっぽくなり、物を置き忘れる、ガスや水道の栓を閉め忘れる、約束を忘れるなどがしばしばくり返しみられるようになります。ひどくなると、少し前に食べた食事のこと、少し前に会った人の名前、少し前に起こったできごと、家族の名前、自分の年齢や住所も忘れて、わからなくなります。このようになっても、多くの場合、自分が忘れっぽいという自覚がないのが特徴です。

計算力は衰え、簡単なお金の勘定を間違えたり、できなかったりします。また一般知識も失われ、理解力や判断力も悪くなり、相手の話が理解できなかったり、物事の処理ができなかったり、自分の周囲で起こったできごとへの正しい判断や対応ができなくなります。

日常生活動作が低下してくる

食事の摂取、衣服の着脱、排便・排尿、入浴、歩行などがしだいにひとりでできなくなります。

日時・場所・人物などの認識が悪くなる

「今は何年何月か」「きょうは何曜日か」「今の季節は」「昼か夜か」などの日時に関する認識、「ここがどこか」「自分の家はどこか」などの場所に関する認識、「配偶者、子ども、知人の顔や名前」など人物に関する認識などが失われるようになります。

精神症状が現れてくる

不眠、妄想、せん妄[もう]、人柄(人格)の変化、興奮などがみられます。妄想は「自分の持物をだれかに盗まれた」「とられた」などと訴える被害妄想[ひがいもうそう]や嫉妬妄想[しつともうそう]がしばしばみられます。せん妄は意識が混濁して、落ちつきがなくなり、錯覚、幻視、興奮を伴う状態で、夜間によくみられます(夜間せん妄)。また人柄も変化し、認知症の進行とともに放置しておくと、意欲が失われ積極的に何もしようとしなくなります。

問題行動(行動障害)もみられる

徘徊[はいかい]、不潔行為、叫び声、破衣行為[はいこうい]、昼夜の区別不能、攻撃的行為などがみられます。外出して迷子となったり、夜間に騒いだり、便をこねまわしたり、介護に抵抗するような行為は介護者を困らせます。

神経症状が現れる

脳血管性痴呆[のうけつかんせいちほう]では、片麻痺[へんまひ](半身が麻痺する)、構語障害[こうごしようがい](うまくしゃべれない)、言語障害(言葉が出てこない)、歩行障害を伴うこともあります(表19―7)。

(大塚俊男)

最近なんとなく歩きにくい…もしかしたら、それは特発性正常圧水頭症かもしれません