子宮内膜症[しきゆうないまくしよう]

内膜が本来の場所以外に増生する

正常の子宮内膜は、子宮体部の内面(子宮腔[しきゆうくう])をおおっています。ところが、その子宮内膜と同様の組織が、子宮の内面(本来の場所)以外の場所(子宮筋層など)や骨盤の中や腸のほうにまで存在し増生することがあり、これを広い意味での子宮内膜症と呼んでいます。

子宮内膜症は、内膜の組織が子宮体部の筋層内にくい込んでいる子宮腺筋症[しきゆうせんきんしよう](内性内膜症)と、子宮の周囲や子宮の外に散らばっている外性内膜症に分けられます。しかし、実際に多くみられ問題となる内膜症は、子宮の外の骨盤内に存在するものなので、子宮内膜症と呼ぶ場合には骨盤内子宮内膜症のことを指していいます。

骨盤内子宮内膜症の好発部位は卵巣(チョコレート嚢腫[のうしゆ])、子宮表面、子宮と直腸間の腹膜(ダグラス窩腹膜[かふくまく])、子宮靱帯[しきゆうじんたい]、直腸、膀胱[ぼうこう]などです。骨盤内子宮内膜症の発生は20代にもっとも多くみられます。

子宮腺筋症では40代をピークに30〜50歳まで幅広くみられます。

強い月経痛が特徴

症状は子宮内膜症の発生部位や病状の程度によって異なりますが、共通するのは強い月経痛です。月経に一致した下腹部痛や腰痛は約70〜80%の人にみられ、これは症状の中でも特徴的で、しだいに増悪していく傾向があります。経過の長い骨盤内子宮内膜症では、月経以外にも月経時と同様の下腹部痛や腰痛がみられ、これに加えて性交痛や排便痛が認められることがあります。また、子宮腺筋症[しきゆうせんきんしよう]の場合ではしばしば月経の増量を伴います。

不妊の原因になりやすい

子宮内膜症では不妊になる率が高いことがよく知られています。骨盤内子宮内膜症は癒着[ゆちやく]しやすいので、卵管や卵巣の周囲に発生した場合には、癒着により卵管が狭くなったり閉鎖したりします。それにより卵管の可動性が失われて、卵巣から排卵された卵子を、卵管内に取り入れることができなくなるため、不妊症*になることがしばしばあります。

卵巣内に内膜症があると、月経時に少しずつ出血し、それが卵巣内に徐々にたまって、卵巣が腫大[しゆだい]してきます。たまった血液は変性してチョコレートのような色になるので、チョコレート嚢腫[のうしゆ]と呼んでいます。この嚢腫は大きくなると破裂することがあり、突然の激しい下腹部痛や吐き気、嘔吐[おうと]、時に発熱などがみられることがあります。

不妊症

癒着が起こらなかった場合でも、子宮内膜症の腹水の中には受精を妨害するマクロファージなどの免疫細胞や、サイトカインなどの免疫反応物質が含まれていることが知られています。そのため、骨盤内子宮内膜症の女性の20〜70%に不妊症を訴える人がいます。

薬で内膜の増殖を抑える

治療法には薬物療法(ホルモン療法)、手術療法があります。年齢、病状の程度、将来子どもを希望するかどうかなどにより治療方針が異なります(図15―9)。

薬物療法は、症状の改善、手術後の再発予防、妊孕性[にんようせい](妊娠する能力)の向上などの目的で行われます。従来の女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を使った療法に代わり、現在多く使用されている薬剤は男性ホルモン誘導体(ダナゾール)とGn-RHアナログ(偽閉経療法)という薬剤です。両剤はその作用は異なりますが、内膜の増殖を抑えるはたらきがあり、一般に6カ月間投与します。

妊娠の希望の有無で手術法を選ぶ

手術療法には根治手術、準根治手術、保存手術があります。

【根治手術】

子宮摘出と同時に両側の付属器(卵巣・卵管)を摘出する手術です。子どもを望まず、薬物療法が無効な重症例が対象となります。

【準根治手術】

子宮全摘と病巣の摘出を行う手術です。正常な卵巣を、可能な限り残すことによって、術後の肩こり、のぼせ、発汗などの卵巣機能欠落症状が防止できます。しかし、内膜症の再発は100%否定することはできません。

【保存手術】

妊娠する能力を残し、さらにこれをよくするために行う手術で、開腹手術と腹腔鏡で行うものとに分けられます。開腹手術では病巣の摘出、形成、癒着[ゆちやく]の剥離[はくり]、子宮位置の矯正などが行われます。腹腔鏡術では病巣の焼灼[しようしやく]、癒着の剥離、チョコレート嚢腫[のうしゆ]の摘出などを行います。