卵管炎[らんかんえん]、卵巣炎[らんそうえん]

骨盤内の臓器のうちでもっとも炎症を起こしやすいのが卵管です。卵管が細菌感染などにより炎症を起こした場合を卵管炎といいます。通常、卵管炎のある側の卵巣にも炎症が及び、同時に卵巣炎も起こします。そのために両方合わせて子宮付属器炎と呼んでいます。

原因菌は、ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、淋菌[りんきん]、結核菌、嫌気性球菌[けんきせいきゆうきん]などがおもなものですが、最近では、クラミジアやマイコプラズマによる卵管炎もしばしばみられます。

感染は腟[ちつ]や子宮の粘膜に沿って卵管に上行感染(図15―7)する場合がほとんどです。しかし、結核菌などでは、病巣の肺や腹膜から血流に乗って卵管に下行感染することもあります。まれに、虫垂炎[ちゆうすいえん]や腎盂炎[じんうえん]でも卵管に下行感染することが知られています。

急性期は発熱・下腹部痛に襲われる

ほかの炎症性の病気と同じように、急性期、亜急性期(治療によって、急性期の症状が鎮まった時期)、慢性期へと移っていきます。

菌力が強く急性発症のものは突然の発熱と下腹部痛が必発症状としてみられます。それ以外に膿性[のうせい]のおりもの(帯下[たいげ])がみられることもあります。こうした症状があればまず婦人科を受診してください。腹部の診察や内診により著明な圧痛が卵管部にあることが急性期の卵管炎の特徴です。

安静と薬物治療が原則

急性期・亜急性期のものは炎症の拡大を防ぐため、安静と抗生物質による治療が原則となります。

しかし炎症が強かったものでは、卵管口がふさがり卵管や腟[ちつ]に炎症からの滲出液[しんしゆつえき]がたまってきます。卵管に膿[うみ]がたまると卵管留膿腫[らんかんりゆうのうしゆ]、この状態が治癒し水様性の液が卵管にたまると卵管留水腫[らんかんりゆうすいしゆ]と呼ばれます。まれですが卵巣に膿がたまり、卵巣膿瘍[らんそうのうよう]ができることもあります。このような場合には治療はきわめて難しくなります。

慢性期に入ると下腹部の鈍痛、牽引痛[けんいんつう]、腹痛、月経痛など、卵管・卵巣の癒着[ゆちやく]に基づく症状が出現します。

症状が改善しなければ手術

治療は抗生物質と消炎薬で様子を見ていきますが、症状がとれず腫瘤[しゆりゆう]の縮小が認められないものでは手術が必要です。卵管留膿腫や卵巣膿瘍の場合では、ある程度症状が消失した後に膿腫や卵巣を摘出します。卵管留水腫では水腫を摘出せずに卵管開口術を行うこともあります。

このように、症状が強く急性発症したものや、慢性に経過した卵管炎の中にはしばしば卵管や卵巣に膿腫や膿瘍ができて、それを摘出しなくてはならないことがあります。

卵管炎は周囲の組織に癒着を起こしたり卵管口をふさいで不妊症となることがよくあります。卵管性の不妊症は顕微鏡的手術が普及していますが、それでも再び癒着や閉鎖を起こして、治りにくく、若い女性や妊娠を希望する女性にとり、たいへん重要な問題となります。