子宮頸がん[しきゆうけいがん]

85%が扁平上皮がん[へんぺいじようひがん]、頸部腺がん[けいぶせんがん]

子宮頸部の表面は、腟[ちつ]に近い部分は皮膚と同じ扁平上皮でおおわれており、さらに、奥の子宮体部側は、粘液を分泌[ぶんぴつ]する腺上皮でできています。一般にいう子宮頸がんは、約85%が扁平上皮の細胞から発生する子宮頸部扁平上皮がんです。

腺上皮の細胞から発生する子宮頸部腺がんは、比較的検診で発見されにくく、進行してから発見される場合もあり、放射線治療や化学療法が効きにくいなど、扁平上皮がんと比べると予後が悪い傾向があります。

子宮頸がん[しきゆうけいがん]はウイルスの感染が誘因

子宮頸がんの発症には、性行為による、ヒト乳頭腫ウイルス(パピローマウイルス;HPV)の感染が誘因になっていることが明らかにされています。

パピローマウイルスは、いぼをつくるウイルスの一種で、70種類以上のタイプの中のいくつかのものが、異形成や頸がんの発生に関与しています。

一般にHPVはウイルスをもった男性との性交渉によって、外陰部、腟[ちつ]、子宮頸部などの細胞に感染します。

軽度異形成になっても、軽度の場合は、経過観察しているうちに、約70%は自然に消失することも知られています。つまり、HPVに感染しても必ずがんになるわけではありません。

外陰がんや腟がんは非常にまれにしか生じないのですが、子宮頸がんは多く発生します。

一方、子宮体がんは、HPV感染とは無関係です。

子宮頸がんは、性交との関連が強く、高リスクの要因として、妊娠・出産回数が多い人、初めての性交年齢の若い人、性行為の相手が複数いる人、喫煙歴のある人などが挙げられています。ただし、全ての人が該当するわけではありません。特に腺がんの場合、性交経験のない人にも発症した例が知られています。

若年層に増加傾向、早期なら100%治癒

子宮頸がんでは、前がん病変での早期発見、早期治療の症例が増加し、がんになる前に治療がされるようになったことと、がんになったとしても、早期がんである0期〜Ia期のうちに約65%が発見され、ほぼ100%治癒するため、死亡数は激減しました。しかしながら、発生率は決して少なくなっていないことを忘れてはいけません。

性交開始年齢が若年化するとともに若年者の発症が多くなっており、平成16年4月の厚生労働省の通達では、子宮頸がん検診の開始年齢を20歳に引き下げることになりました。

治療は進行度で異なる

(1)子宮温存療法:円錐切除術と光線力学療法

【0期、Ia 期の初期に適応】

異形成(特に高度異形成)や0期の場合、また、Ia期の浸潤の深さが3mm以内の場合は、子宮を温存する治療が可能です。以前は、完全治癒を目的に子宮を摘出する手術が多く行われていましたが、最近では、若年化傾向もあって妊孕性[にんようせい](生殖能)を残すことを希望する人が増加して、保存的手術が多くなりました。

【無痛、無麻酔で行うPDTが注目される】

そこで、近年、光線力学療法(PDT)が注目されています。PDTは子宮頸部をほぼ原形のまま残し、術中まったく出血することなく、痛みもないので無麻酔下で行える利点があり、治療成績も良好で、術後に妊娠し、正常分娩した人も多くいます。

(2)子宮全摘出術

【単純子宮全摘出術、拡大単純子宮全摘出術】

0期からIa期までの子宮頸がんの場合は、リンパ節への転移はほとんどないので保存的治療も可能ですが、円錐切除ができない場合や、患者さんが妊娠を望まない場合は、通常、完全治癒を目的として、単純子宮全摘出術または、拡大単純子宮全摘出術を行います。いずれも閉経前の人は卵巣は残しますので、ホルモン的には問題なく後遺症はありません。子宮体がんの心配もなくなります。

【準広範性子宮全摘出術】

微小浸潤がんのIa期の中でも、特にIa2期が疑われる場合などでは、準広範性子宮全摘出術が行われます。骨盤部のリンパ節の郭清[かくせい](除去すること)も加え、腟[ちつ]もやや多めにとります。卵巣は浸潤の状態や年齢を考慮して、残す場合と切除する場合があります。

【広範子宮頸部摘出術】

また、特殊な場合として、Ia2期および低リスクとされる腫瘍径の小さいIb1期の症例で妊孕性[にんようせい]の温存を強く希望する場合、広範子宮頸部摘出術を行うことがあります。

骨盤リンパ節郭清と子宮頸部を基靱帯[きじんたい]の一部を含めて切除し、子宮体部を温存する術式ですが、フランスやカナダで報告され、わが国でもごく一部の施設で行われるようになりました。ただし、術中迅速病理検査にてリンパ節転移を認めたり、内頸部側断端部にがんが残っている場合は、温存術の適応外になります。

【広範性子宮全摘出術】

さらに明らかな浸潤がんのIa2期や子宮の周囲にがんが広がるII期になると、子宮だけでなく、子宮の周りの組織や腟を広い範囲で切除する、広範性子宮全摘出術を行います。通常は卵巣も切除します。

(3)放射線療法と化学療法

【化学・放射線同時併用療法が標準に】

放射線療法は、従来、単独で行う場合が多かったのですが、最近欧米では、IIb〜IVa期の進行がんは、放射線療法と化学療法を併用する化学・放射線同時併用療法が標準治療とされています。欧米の成績では、併用するほうが良好との意見が強くなっています。ただし、副作用はやや強くなる傾向もあります。

がんの浸潤が深く、広い範囲に及んで手術ができないIII〜IV期の進行がんの場合や、高齢、肥満、手術に問題のある合併症がある場合には、放射線療法単独または、化学・放射線同時併用療法が行われます。併用する化学療法の抗がん剤の種類や量は、がんの進行状況や病理組織やその方の体重などに応じて選ばれ、施設によっても、さまざまなのが現状です。

【主治療前補助化学療法】

さらに近年、新しく有効な抗がん剤の開発が進み、主治療の手術や放射線療法を行う前に、原発病巣の縮小と遠隔転移の制御を目的にして、主治療前補助化学療法(NAC)も行われるようになりました。投与法には、点滴で薬を投与するのが一般的ですが、子宮動脈へ動注する方法もあります。

IIb期やIIIa期でも、先に化学療法を行ってがんを小さくしてから、手術することもあります。IIIb〜IVa期などの本来は手術ができない進行期のがんも、NAC を行った後に、手術ができることもあります。NAC併用後に手術ができた症例は、放射線療法単独の症例と比べて予後がよいとされています。

腺がんの治療はNACと外科手術

子宮頸部腺がん[しきゆうけいぶせんがん]は、0期やIa期で発見されれば、予後は悪くないのですが、ほとんどが、Ib期以上になってから見つかることが多く、Ib期以上は、扁平上皮がん[へんぺいじようひがん]と比較して、予後が悪い傾向があります。

0期の場合は、円錐切除術で病変の遺残がなければ、子宮温存も可能です。Ia期腺がんは、通常は準広範性子宮全摘出術を行います。放射線感受性のよくない子宮頸部腺がんや混合型がんは、第一に手術が必要ですが、腺がんのIb期以上の症例にNACを行い、可及的に手術ができる状態にすることは、予後の改善につながる可能性があると思われます。一方、抗がん剤の効果がなかった場合には、手術の時期を遅らせることにもなりかねないため、手術ができる場合は、手術を優先させたほうがよいとの意見もあります。