膵炎[すいえん]

膵炎は膵臓から分泌された消化酵素によって、膵臓自身が消化されてしまうという不思議な病気です。

膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、それぞれ症状や治療法が違います。

急性膵炎


多くは胆石症[たんせきしよう]とアルコール多飲で起こる

急性膵炎の原因としては、胆道系に病気、特に胆石症があって起こるものがもっとも多いのですが、アルコール性急性膵炎も多くみられます。アルコール多飲がなぜ膵炎を起こすかはよくわかっていません。そのほか原因不明で、特発性膵炎[とくはつせいすいえん]と呼ばれているものがあります。

激しい上腹部痛がいつまでもつづく

上腹部の激しい痛みですが、膵臓が背中のほうに位置している関係から、背中にも痛みを感ずることがしばしばあります。時には、肩のほうにも痛みが及ぶこともあります。痛みは急性炎症がつづいている間ずっとつづきます。この点は、胆石痛発作でいったん鎮痛薬で痛みを止めると、その後、痛みが起こらないのとは違っています。

腹痛と同時に吐き気や嘔吐、発熱なども伴います。重症の場合には、高熱が出て、血圧も下がってショック状態となります。

慢性膵炎


膵臓の細胞が壊死[えし]・変性を起こしてくる

慢性膵炎では、時々急性発作をくり返して上腹部痛を訴える場合と、初めからほとんど腹痛を訴えない場合とがあります。いずれにしても、慢性膵炎では、消化酵素をつくる腺房細胞[せんぼうさいぼう]が徐々に壊されて脱落し、線維が増えて膵臓全体がかたくなり、その機能が低下してきます。

慢性膵炎の原因の過半数はアルコール多飲によるもので、アルコール性慢性膵炎と呼ばれています。約3分の1の患者さんは原因不明で、特発性慢性膵炎[とくはつせいまんせいすいえん]と呼ばれています。そのほか、胆道系の病気が原因となることも少なくありません。

症状は上腹部痛、吐き気、食欲不振など

慢性膵炎[すいえん]の病気の始まりのころは、約80%が上腹部痛を訴えます。背部痛も約半数にみられます。そのほか、吐き気や食欲不振、腹部が張る感じ、体重減少などの症状もみられてきます。

膵臓のはたらきが著しく低下すると消化吸収が悪くなり、そのために下痢を起こすことがあります。しかし、欧米での慢性膵炎患者さんに比べて、わが国での患者さんでは下痢を訴える頻度はあまり高くはありません。これは食物中の脂肪摂取量が、日本人では比較的少ないことと関係があると考えられています。

患者さんの上腹部を押さえると痛みを訴え(圧痛)、おなかをさわると、かたくなった膵臓を外から触れることができます。

膵臓がかたくなりますと、膵頭部を通っている胆管が圧迫されて狭窄[きようさく]するために、黄疸[おうだん]を伴うようにもなります。この場合は、膵臓がんによる胆道の圧迫とよく似ていますので、その鑑別が難しいことさえあります。

慢性膵炎では、しばしば膵管内や膵実質内に結石(膵石[すいせき])ができてきます。さらに、膵臓内のインスリンをつくる細胞のはたらきも障害されて、糖尿病を合併してくることも少なくありません。

(古田精市)