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今週のトピックスは・・・2009.03.05

集中できない生きづらさ…AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の世界を疑似体験できる
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早い段階で治療を開始・継続すれば、多動性はかなり改善されることも
AD/HD(注意欠陥・多動性障害)のある子供は、気が散りやすく、順序立てて行動することや、待つことが苦手で、衝動的な行動に出がちで、学校の成績が伸びなかったり、友人関係や家族関係をうまく築けない場合があります。学齢期の子供たちの3〜7%に出現するといわれており、30人に1〜2人いる可能性がある、珍しくない症状です。
「親や教師、周囲の人々に叱られたり、注意されてばかりで、自信喪失、罪悪感、無力感を抱えて悩む子供も多く、この病気に対する周囲の理解の必要を感じます」と、京都大学医学部精神医学教室院内講師の岡田俊さんは話します。
AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の原因については、決定的なものは発見されていませんが、以下のような要因が相互に影響し合って、症状があらわれると考えられます。

【AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の要因】
  • 遺伝的なもの
  • 神経伝達物質のドーパミン、ノルアドレナリンの活性が過剰なもの
  • 脳内の前頭葉や尾状核という、注意力や判断力、衝動の抑制にかかわる部分が通常より1割ほど小さいもの
またAD/HD(注意欠陥・多動性障害)は、「異常はないけれど活発な人」と見分けることが難しく、診断には、さまざまな調査と注意深い観察を要します。

【AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の診断方法】
  • 面接調査
  • 行動調査
  • 行動観察
  • 生育歴、既往症、主な問題行動に関する養育者からの聞き取り調査
  • 知能検査
  • 学校などからの情報聞き取り調査
  • 頭部MRI、頭部CT、脳波検査
治療法は、薬物治療では、中枢神経刺激薬という、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを抑制する薬が用いられ、70〜80%に改善が見られます。心理社会的治療では、社会に適応するための感情や行動をある程度コントロールする方法を学び、一方で過去の失敗で傷つき、失いかけた自信を取り戻せるように指導します。
このような治療を小さい頃からしっかりと継続していくと、大人になった時には、多動性などはかなり改善されます。ただし大人になってもAD/HDの症状が残り、物忘れや段取り能力、整理整頓能力などが改善されないと、仕事で評価されにくかったり、人間関係をうまく築けない場合があります。また衝動をコントロールできずに、怒りを相手にぶつけてしまったり、上司や取引先とトラブルを起こしてしまうことで、職を失い、アルコールや薬物に依存するケースも稀に見られます。そのため、早めに周囲の人が医師と相談して治療を開始し、将来は自立して一人でもしっかり生活していけるように、サポートしてあげることが大切です。
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「踏切の先にいる友達に気をとられて遮断機を抜けようとし、大人に注意されるAD/HD症状を持つ子供のようす」
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「ゴーグルとヘッドフォンでAD/HDの世界を疑似体験できるバーチャルAD/HD」
AD/HDの世界を体験し、適切な対処や接し方を学べる装置、バーチャルAD/HD
  AD/HD(注意欠陥・多動性障害)は周囲になかなか理解されにくい症状ですが、岡田俊さんは、AD/HDのある子供たちの症状を疑似体験できる装置を開発しました。
『バーチャルAD/HD』と呼ばれるこの装置は、ヘッドフォンとゴーグルをつけて、「小学校3年生のつよし君」という架空の男の子の日常を通じて、AD/HDの世界を体験できます。この装置を使ったバーチャル体験では、常に視界が定まらず、いろいろな音が聞こえて、授業で先生が話す声に集中できなかったり、踏切が閉まっているのに、友達を見つけて電車が迫ってくる踏切に侵入してしまったりします。また野球の練習に行く途中で、捨ててある漫画を読みふけり、野球の道具を忘れて、練習に遅刻したり、と次々と問題行動を起こして自己嫌悪に陥ってしまいます。
この装置を使うと、AD/HDの症状が、通常の人の視覚や聴覚と著しく異なっていて、さまざまな情報が入り乱れて集中できないことが体感できます。「一般の人々に少しでもAD/HDのことを正しく理解してもらう目的で開発したのがこの装置です。AD/HDの子供に接する時は、集中しやすい環境を整え、指示は短く穏やかに行い、ほめることも忘れないで、子供の特性を伸ばしてあげましょう」と岡田さんはAD/HDへの周囲の理解と正しい対処法について説明しました。
なおこの装置は、ヤンセンファーマが全国の医療機関を対象に無償で体験の機会を提供しています。
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◆お話を伺ったのは…  岡田 俊(おかだ・たかし)さん
足立 満(あだち・みつる)さん 京都大学医学部精神医学教室 院内講師
取材・文/宇山恵子

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