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2006年7月には『最高の医療をうけるための患者学』を上梓されるなど、ここ数年「参加型医療」を根づかせるための活動を積極的に展開されていますが、なぜこのようなことを始められたのですか? | ||
このような活動を始めようと思ったのは、今から6年ほど前のことです。ある抗がん剤の講演を依頼されて来日し、日本の医師たちと話をする機会がありました。そのとき日米の医療格差はほとんどないと感じたのですが、その直後に日本の患者さんに会ってみると印象が一変しました。患者さんは自分の病気のことをきちんと説明できず、しかも自分が受けている医療に全然満足していなかったのです。日本と米国の医療の大きな差を感じた瞬間でした。 日本の医療は間違いなく世界でトップレベルの技術を誇っているのに、患者さんの満足度あるいは納得度は低い。これは医療技術が高くても医療の質が伴っていないことを意味しています。優秀で熱意もある日本の医師たちの努力と、進んだ医療技術を患者さんの満足感につなげるために、何をするべきなのか――。 僕はその答えを日本の外来診療の中に見いだしました。それ以来、患者さんと医療者のコミュニケーションのあり方を根本から変える「参加型医療」を日本に定着させるために、さまざまな活動を展開しています。 |
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「参加型医療」とは、具体的にはどのようなことでしょうか。? | ||
また、病院側も患者さんが積極的に治療に参加できるための環境づくりに努め、医療者も患者さんのニーズを最大限に考慮しながら、治癒をめざして連携を図っています。このように患者さんと医療者が対等な関係で実践する医療のことを「参加型医療」といいます。 一方日本では、長い間、医師のパターナリズム(父権主義)のもとで医療が行われてきた歴史があるため、患者さんたちは“先生におまかせする”ことにすっかり慣れっこになっています。また“おまかせ”であったとしても、多くの患者さんはよい病院にかかりたいと望んでいます。患者さんの心情としては当たり前のことですが、口コミや病院ランキング本などを参考に病院を選んで受診さえすれば、満足のいく医療が受けられると思っている人が多いのも事実です。 しかし、満足のいく医療が受けられるかどうかは、患者さんが医療者に対してどのようなアプローチができるのか、ということに深く関係しています。患者さんにとって何が最良の方法かを判断できるのは、主治医でもなければ家族でもありません。最終的に治療を決める、あるいは納得しなければならないのは、患者さん(あなた)自身です。なぜなら治療を受けるのは患者さんの体であり、本人が納得しなければ、それは満足のいく “最高の医療”にならないからです。 したがって、よりよい医療を受けるためには、まず患者さん自身が自分の行動を「おまかせ」から「参加型」に変えていかなければなりません。 |
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“自分にとって最高の医療”を受けるためには、患者さんが主体的に医療に参加することが重要なのですね。では、具体的にどうすればよいのでしょうか? | ||
| 医療者とのコミュニケーション能力を磨くことが何よりも重要です。そのために僕は「最高の医療を受けるための9つのステップ」(表参照)を開発しました。できるところから実践していただいてかまわないのですが、その大前提として、患者さんは「自分の病気とその治療法についてよく知る」という心構えを持つことが必要です。 さらに、ここで大切なのは「自分の得た情報を正しく理解できているか」ということです。たとえば薬を処方された場合、薬の名前はもちろんのこと、なぜその薬が出されたのか、作用と副作用にはどのようなものがあるのかなどを、きちんと説明できるでしょうか。 もしも説明できないのであれば、それは十分に理解できていないことを意味しているので、医師や薬剤師に理解できるまできちんと聞くべきです。最近の患者さんの傾向として、自分が納得できない状況に遭遇したとき「医療ミスではないか」と、まず疑う人が増えているように感じます。自分が受けている医療に不信感を持つ前に、わからないことを確認する姿勢が、医療者とのよりよいコミュニケーションを交わすうえでは大切です。 |
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“医療者は忙しい”という印象があり、患者さんが聞きたいことを聞けるような雰囲気ではありません。上手に質問するコツを教えてください。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
また、質問するときは、ポイントを絞り、何が理解できていないのかということを的確に伝えられると非常によいと思います。情報を整理し、病気や治療の理解度を確認するうえで役に立つ「自分のカルテ」を作ってみましょう。 もちろん、医師への的確な質問は1回や2回で身につくものではありません。ましてや、がんなどの大病にかかってからしっかり質問してみようと思っても、多くの人はがんが見つかっただけでパニックになってしまい、つい「おまかせします」と言ってしまいがちです。しかし、いったんその言葉を口にすると、医療者は「この患者さんは依存するタイプだ」と思い込むところがあり、それ以上の詳しい説明をしなくなります。 そういう意味では最初の態度が肝心です。患者さんは「質問」というかたちで自分の意思表示を明確にしなければ、医療者のペースで治療はどんどん進み、患者さんの満足度はさらに低いものになっていきます。 いざというときにあわてずに意思表示するためには、繰り返し練習しておくことが必要なのです。ぜひ、風邪や腹痛などの軽い病気のときから、「自分の病気とその治療法についてよく知る」という心構えを持ち、医療者――とくに医師に対して質問することに慣れておいてください。 また、闘病中に医療者とのコミュニケーションに困ることがあれば「 チームオンコロジー.Com 」もご活用ください。このサイトでは一般向けの掲示板を新設し、主に患者さんと医療者あるいは家族とのコミュニケーションを中心に、さまざまな話題や意見を交換する場を提供しています。 |
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最後に日本の患者さんへのメッセージをお願いします。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 昨今は日本でも患者さん同士が助け合う、患者会の活動が活発になってきました。なかには、患者さんにとってよい医療を実現するために学会や行政に対し活発に発言している団体もあり、とてもすばらしいことだと思います。 しかし、医療システムが変わるには時間がかかります。いま病気で苦しんでいる患者さんやその家族が恩恵を受けるのはずっと先のことです。とはいえ、目の前にいる医療者を変えることも難しい。患者さんが満足するために、いちばん手っ取り早く、しかも確実な方法は自分の行動を変えることです。 僕は日本の医療者に対しても「チーム医療」という視点からアプローチしていますが、日本の医療を動かしていくスピードを速められるのは、患者さんだけではないかと考えています。“患者が変われば、医療が変わる――”。日本の患者さんには、ぜひこのことを十分に自覚していただきたいと思っています。 |
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| チーム医療が患者さんへの情報をより豊かにする ―日本でも米国流の本格的な教育を実施― がんの化学療法を専門とする上野直人さんは、がんの治療を効果的に行うために必要かつ最適とされる「チーム医療」の推進に力を入れ、日本でも2002年より年に1回、医療従事者のためのセミナーを実施している。 すでに全国各地のがん医療に携わる医師、看護師、薬剤師ら300人以上が「Medical Exchange Program Educational Seminar」を受講。講師陣はすべてMDアンダーソンがんセンターのスタッフで、同センターで実際に行われているチーム医療についてディスカッションやグループワークを通して学んでもらうのが目的だ。そのため医師、看護師、薬剤師の3人一組で参加することが条件になっている。毎年、受講者の中から数名、MDアンダーソンがんセンターに短期研修できる特典もあり、これまでに30人が渡米。短期研修を受けた医療者は現在、同セミナーのチューターとして後進の育成に活躍している。 上野さんは「日本の医療者の中には、チーム医療といえば“分担型医療”だと勘違いしている人も多いが、それぞれの職種がよりよい医療を実践するためには、役割を分担するのではなく拡張することが大切。また職種が違えば、ある事実に関しても異なる角度から分析することが可能で、患者さんへの情報がより豊かになる」と話す。 ここ数年、日本の医療界でもチーム医療がようやく注目されるようになってきたが、本格的な教育はこれから。患者さんの立場としては、一日も早くどこの病院でもチーム医療が当たり前に行われるようになることを願いたい。 |
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| 構成・文/渡辺 千鶴 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||












