医療コミュニケーションについて

掲示物から医師の説明まで、患者にとって「わかりやすい病院」が大切

【いい病院・いい医師のポイント】 (1) 医療スタッフの説明が、わかりやすい。 (2) 病院内の掲示物、説明書、同意書などがわかりやすい。 (3) 患者の疑問や質問に、ていねいに答えてくれる。 (4) 患者の立場で医療サービスの向上に心がけている。
野呂幾久子(のろ・いくこ)さん
1984年国際基督教大学教養学部卒業、同年株式会社日本郵船に入社。同社退社後、87年から90年まで米国国務省日本語研修所講師として、米国、カナダ、オーストラリアなどの外交官に日本語を教える。92年筑波大学大学院地域研究研究科修了後、静岡大学教育学部で留学生への日本語教育、日本人学生への日本語・コミュニケーション教育に従事。2001年より東京慈恵会医科大学人間科学教室日本語教育研究室助教授。04年は米国Johns Hopkins University, School of Public Healthに留学。

マニュアルではない、「他者」の気持ちがわかる医療人が理想

野呂先生は現在東京慈恵会医科大学で、医大生に医療コミュニケーションについて教授していますが、その目的は?
私のねらいは、患者の気持ちがわかる医療人を育てることです。そのためには、患者さんの話すことをきちんと聞いてあげられる、患者さんの気持ちを考えながら説明をするなど、自分中心ではなく、他者の気持ちになってコミュニケーションをするスキルを養成する必要を感じ、さまざまな取り組みを行っています。
野呂さんの講義に熱心に聞き入る生徒たち。医学科と看護学科が一緒に受講し、チーム医療に備えている。
授業の雰囲気と医者の卵たちの反応は?
  授業は、医学科と看護学科の学生が一緒に受講するシステムになっており、これも将来の「チーム医療」に備え、異なった立場や考えの人とうまくコミュニケーションできるようにと配慮しています。学生たちは、医師や看護師を目指す者として社会的使命感が強く、とても前向きで素直な人が多いです。でも、そんな素直さと真面目さが、時としてマニュアル化したコミュニケーション技法を鵜呑みにする可能性もあるので、注意しています。医療コミュニケーションは、ファストフード店などのサービス業の手法を簡単に取り入れることはできません。一人ひとりの患者さんに対して、それぞれ違った対応をしていかないといけない難しさがありますから。

患者の声を医療現場にフィードバックして欲しい!

最近の病院で、気になることは?
  病院の掲示物、手術の際の同意書などには医学用語がいっぱいで、患者さんには理解できないものがたくさんあります。例えば入院時に渡されるパンフレットには、病院の理事の名前は書かれているけれど、病院内のATMや近隣の郵便局、衣料品店などの案内など、入院中の患者さんが実際に必要とする情報がない場合があります。また、検査や手術の同意書などは、文字も小さく、たとえ読み上げてもらっても、理解できない専門用語がずらりと並んでいるものも多く見られます。  
チームワークの良さがうかがえる和気あいあいとした写真。この笑顔のまま医療現場で活躍してほしい。
このような状況がなぜ起きるのでしょうか?
  誰のためのサービスなのか? 当然患者さんのためでなければいけないのに、いつの間にか「患者の視点」が置き去りにされている気がします。ですから私の授業を通じて、医療スタッフに必要なのは、患者の視点に立つこと。そして、そこから生まれるわかりやすい説明と親身な態度だということを、早い時期に学生たちに伝え、それが医療の基本だということを忘れないようにしてもらいたいと思っています。
医療サービス向上に必要なことは?
  患者さんの声が必要です。ぜひ、患者さんの声を、医療現場にフィードバックして欲しいですね。そのためには、患者サイドも、おまかせ医療からパートナーシップへと、医療についての意識改革を促したいと思います。
構成・文/宇山恵子
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