高脂血症(高リポたんぱく血症)

血液中の脂質(脂肪)が増えすぎた状態

血液の液体成分である血清(あるいは血漿[けつしよう])の中にはコレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)、リン脂質などの血清脂質と呼ばれる脂質(脂肪)が存在します。これらの血清脂質は、小腸あるいは肝臓などで合成され、そこから末梢[まつしよう]の組織へと血液中を運ばれていきます。コレステロール、トリグリセリド、リン脂質はからだにとって欠くことのできない重要な物質です。ところがなんらかの代謝異常によって、血液中に増えすぎるといろいろな問題を起こしてきます。

高脂血症にもいろいろな種類があります。血液中のコレステロールが増えれば高コレステロール血症、トリグリセリドが増えれば高トリグリセリド血症とも呼ばれます。この両者が増加する場合もあります。

高脂血症の原因


高脂血症の2つの原因

高脂血症の原因は大きくは2つに分けられます(表6―6)。

ひとつには、糖尿病などもとになる病気や、アルコールのとりすぎが原因で、血液中の脂肪が増加する続発性(二次性)高脂血症と呼ばれるものです。これらの病気によって生じる高脂血症は、一般にもとの病気を治療すると改善されてくるのが特徴です。

もうひとつは、原発性(一次性)高脂血症といって、原因となりうる疾患もなく、薬剤の服用もしていないのに、高脂血症を示すものです。多くの場合、家族性、遺伝性のものです。これは脂肪の吸収や合成、肝臓や血液中での脂質代謝の経路のある部位に欠陥があって、高脂血症が起こってくるものです。

今日では、いろいろな種類の原発性高脂血症が知られています。中でも、家族性高コレステロール血症と呼ばれる高脂血症は比較的よくみられ重要です。

両親から異常遺伝子を受け継ぐと起きる

家族性高コレステロール血症は、末梢[まつしよう]組織の細胞表面でLDLを結合して細胞内へ取り込むのに必要なLDL受容体の異常で起こります。両親の一方から異常遺伝子を受け継ぐと、LDL受容体が正常者の半分しかはたらかないので、LDLが細胞内に取り込まれず血液中にたまってきます。そのため、血清コレステロールは増加します(正常では120〜220mgのところが300〜400mgにもなります)。非常にまれですが、両親の双方から異常遺伝子を受け継ぐと、LDL受容体がほとんどはたらかないので、血清コレステロールはたいへん高くなります(500〜1000mg)。

高脂血症の症状


かなり進むまで症状は現れない

高脂血症そのものは、なんら症状を呈しません。

【高LDL血症と動脈硬化】

血液中のLDLが増加すると、それが動脈の内壁に存在する細胞内に取り込まれ、コレステロールがたまって、動脈硬化が起こりやすくなります。血液中のLDLの増加している人では、動脈硬化によって起こる病気にかかりやすいことは、多くの研究により明らかです。反対にHDLの増加している人では動脈硬化性の病気にかかりにくいことも明らかにされています。動脈硬化が進んでくると、いろいろの臓器の血流障害に基づく症状が出てきます。

冠状動脈が動脈硬化を起こすと、狭心症や心筋梗塞[しんきんこうそく]が、脳動脈の動脈硬化では脳梗塞が起こります。そのほかにも、胸部や腹部の大動脈瘤[だいどうみやくりゆう]、手足(特に下肢)の末梢[まつしよう]動脈硬化症なども起こります。これらには致命的な病気が多く、わが国の死因のうち大きな割合を占めています。

【高トリグリセリド血症と動脈硬化】

高トリグリセリド血症には、VLDLの増加による場合と、カイロミクロンの増加による場合とがあります。VLDLの増加による場合が多いのですが、この場合にも動脈硬化が進みやすいといえます。しかし、LDLと動脈硬化の関係にみられるほどトリグリセリドと動脈硬化の関係ははっきりしていません。

カイロミクロンの増加があるときは、トリグリセリド値が著明に上昇します。カイロミクロンは粒子がたいへん大きいため、動脈硬化の原因にはなりにくいとされています。しかし、極端な高トリグリセリド血症では、腹痛や急性膵炎[すいえん]を起こすことがあるので危険です。

【家族性高コレステロール血症と皮膚病変】

家族性高コレステロール血症では、黄色腫[おうしよくしゆ]と呼ばれるコレステロールを含んだ斑状[はんじよう]あるいは腫瘤状[しゆりゆうじよう]の塊が目の縁、アキレス腱[けん]部などに出てきます。

治療は食事療法が基本


高脂血症には、血液中のコレステロールが高い人、トリグリセリドが高い人、その両方が高い人の3つのタイプがあります。

食事の注意もそれぞれで異なります。

コレステロールが高いときの食事

食事療法の基本は、血液中のコレステロールを低下させることです。

【肥満度】

まず、肥満があるかどうか判断します。その結果、肥満があればエネルギー制限を行うべきです。一般に、標準体重1kg当たり25〜30kcalの低エネルギー食とします。

次に、脂肪からとるエネルギーを総エネルギーの20〜25%程度とします。

【脂肪の種類】

脂肪の種類についても注意が必要です。動物性脂肪、乳製品、卵や、ヤシ油、ココナッツ油など一部の植物油脂に多く含まれる飽和脂肪酸をなるべく制限し、大豆油、ゴマ油、紅花油、サラダ油などの植物油に多く含まれる多価不飽和脂肪酸(リノール酸が主体)を多めにとり、その比率が1対1から1対1.5程度にするとよいでしょう。

魚類に多く含まれる多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA、またはIPAと略される)やエゴマ油などに含まれるアルファリノレン酸は血清トリグリセリドを低下させたり、血小板凝集を抑えたりするので、積極的にとるようにしましょう。

オリーブ油などに多く含まれる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸はLDLを低下させ、しかもHDLは低下させないので、最近、注目されています。

【食品の組み合わせ】

食品が血清コレステロール値に及ぼす影響は、その食品中の脂肪酸含有量と脂肪酸の種類、コレステロール含有量によって決まります。そこで、食品ごとに血清コレステロール濃度に及ぼす影響力を計算したものが、コレステロール指数です。

表6―7に食品の常用量のコレステロール指数(CIJ)を示しました。この表で数値の高い食品ほどコレステロールが上昇しやすく、数値が低いほど減らすようにはたらくことを表わしています。食物からとるコレステロールの量は、1日100mg以下になるように食品を選択、組み合わせると、血清コレステロールが増加しません。

【食物繊維】

また、食物繊維は腸内でコレステロールを吸収しにくくしたり、胆汁酸[たんじゆうさん]の排泄を促進するので、1日の摂取量を20〜30gと増やすことも必要です。

大豆たんぱくなどの植物性たんぱくは、血清コレステロールを低下させるはたらきがあります。たんぱく質の供給源として、一部は大豆を利用するとよいでしょう。大豆や大豆製品を食べると、植物性たんぱくと同時に、多価不飽和脂肪酸、食物繊維をもとることができ、その効果は一層大きいといえます。

トリグリセリドが高いときの食事

基本的には、コレステロールが高いときの食事と同じでよいのですが、次の点には特に注意を払いたいものです。

【アルコール】

かなりのエネルギーの供給源となりますし、肝臓でのトリグリセリドの合成を促進させるので、制限あるいは禁止すべきです。お酒の種類によってエネルギーは異なりますが、含まれるアルコール自体が問題であり、その種類は関係ありません。

【糖質の制限】

特に砂糖や果糖のとりすぎに注意してください。間食のケーキ、お菓子、コーヒーや紅茶に入れる砂糖、果糖の多い果物、特に干した果物などを控える必要が出てきます。

【脂肪の制限】

血液中にカイロミクロンが増加している場合は、ほとんどが食事から摂取したトリグリセリドによるので、脂肪の制限が必要です。

コレステロールもトリグリセリドも高いとき

コレステロールが高いときの食事と、トリグリセリドが高いときの食事の両方を満足させるような食事にすればよいのです。

具体的には、エネルギー制限で体重の正常化をはかり、脂肪の制限、特に飽和脂肪酸を制限し、コレステロールの多い食品をなるべく少なくし、砂糖と砂糖を多く含む食品およびアルコール飲料をできるだけ控えるといった食事になります。

重要な点は、全体の栄養バランスをよく保ち、食事の改善を徐々に行い、長期間つづけられるよう、無理のない工夫を積み重ねることです。そのうえで、高脂血症に合併する危険因子をも同時に改善できるような食事にすれば、さらに効果的です。

高脂血症の運動療法・薬物療法


生活の改善

生活の改善により軽減する動脈硬化の危険因子は多いものです。すでに高脂血症という重要な危険因子があるときは、ほかに高血圧、喫煙、糖尿病、高尿酸血症(痛風)、運動不足、A型性格*>、ストレスなどで自分にあてはまるものがあるか特に注意して、それらも含めて改善するような生活スタイルの見直しが必要です。

A型性格

タイプA行動パターンともいいます。人間には2つのタイプがあるといわれています。せっかちで競争心が強く、常に前向きで精力的に仕事をこなすタイプA(A型)と、ゆったりとマイペースのタイプB(B型)です。そして、タイプAの人は冠状動脈硬化を起こしやすいとされています。なお、血液型とは関係ありません。

運動療法

運動を長期間*つづけると、カイロミクロンやVLDLのトリグリセリドを分解する酵素(リポたんぱくリパーゼ)が活性化され、血液中のトリグリセリドやLDLが減り、HDLが増えてきます。自分のからだに合った運動をつづけることは、高脂血症の治療に有効です。

酸素を取り入れながら、長時間つづけられる歩行、ジョギング、水泳(のんびり泳ぎ)などがよいとされています。

運動を長期間

からだを動かしているうちに息がはずんでくる運動、筋肉に酸素が送り込まれる運動、長い時間つづけられる運動がすすめられます。筋肉へ運ばれる血液量が増加して、よい効果が生じます。

薬物療法、その他

食事や運動療法で高脂血症の改善が不十分であれば、薬物療法を開始します。抗高脂血症薬にもいろいろな作用機序のものがありますので、単独で使用されたり、組み合わせて使用されたりします。

高脂血症の改善薬としては、

(1)肝臓でのコレステロールの合成を抑制するはたらきのある薬物(肝細胞内のコレステロール貯蔵量が減少すると、血液中からLDLを取り込むので、血清コレステロールが低下する)

(2)胆汁酸[たんじゆうさん]として排出されるのを促進する薬物(コレステロールは胆汁酸合成の材料です)

(3)血液中での脂肪(VLDLやカイロミクロン)の代謝を促進する薬物

(4)腸管からのコレステロールの吸収を抑制する薬物

が用いられています。

【アフェレーシス療法】

家族性高コレステロール血症などの場合に、薬物療法でも十分にLDLが低下しないことがあります。その場合、アフェレーシス(血漿交換[けつしようこうかん])という方法で、血液中のLDLを吸着して除去することができます。今では、ほとんどの高脂血症は、コントロールできるようになりました。

(石川俊次)