痛風、高尿酸血症

高尿酸血症は体内に尿酸が増えた状態

痛風は、日本では戦前にはまれな病気と考えられていました。戦後、食生活の欧米化が進むにつれて患者数が著しく増加して、現在では生活習慣病の代表的な疾患のひとつとして広くまん延しています。

血液中の尿酸値が高いことを高尿酸血症といいます。一般には尿酸が血液1dL中に7mgを超えた状態をさしています。この高尿酸血症が基礎となって起こるのが痛風です。

痛風は中年男性に多く予備軍は数百万人

女性は、ホルモンの関係で高尿酸血症になりにくく、痛風を起こすことはほとんどありません。また、数日間、高尿酸血症がつづいたくらいでは痛風が起きることはありません。通常は年単位で高尿酸血症がつづいた後、体内で過剰となった尿酸が、関節などにたまり、痛風が起こってきます。このため痛風にかかるのは40〜50代の男性が大部分ですが、最近では30代の男性にも増えています。

2001年の統計で、日本の痛風患者数は、70万人と推定されていますが、その予備軍の高尿酸血症の人は、数百万人にのぼるといわれています。

痛風の症状


突発的な関節の激痛が特徴

健康そうな働きざかりの壮年の男性を襲う、突発的で激烈な関節の痛みが痛風の特徴です。この関節部分の激しい痛みは痛風発作と呼ばれ、多くの場合、夜から明け方にかけて、左右のどちらか一方の足の親指の付け根の部分に起こってきます。数時間以内に患部は赤く腫れ上がり、押さえたときにはもちろん、ふとんの重みだけでもがまんできないほど痛みます。そのため、足をついて立ち上がることも歩くこともできなくなります。

足の親指以外の指、足首、膝、手の指、手首などの関節にも起こります。膝のような大きな関節がおかされる場合は、頭痛、発熱などの全身症状を伴うこともあります。

放っておくとくり返す

痛みは4〜5日つづきますが、特別な治療をしなくてもだんだん軽くなり、2週間ほどで自然にとれてしまいます。しかし、これは病気の本態が治ったことを意味するものではありません。痛風を起こすもとになっている高尿酸血症を放っておくと、1年ほどして同じような痛風発作が再発します。それからも発作をくり返しますが、しだいに3カ月に1回とか、毎月1回とか発作の間隔は短くなり、発作からの回復にも長い時間がかかるようになります。

足の関節にくり返し起こる

痛風発作の起きる場所は、常に同じ関節とは限りませんが、足の関節にくり返されるのがほとんどです。しかし、はじめのうちは、同時に2カ所以上の関節が痛むことはありません。

痛風発作は痛風関節炎とも呼ばれ、尿酸が関節にたまって急性の炎症を起こしたものです。

痛風結節は関節がこぶのように腫れる

病気が進行してくると、からだ中の多くの関節が同時に腫れて痛むようになり、その周囲には痛風結節と呼ばれるこぶがみられ、関節は醜く変形して機能障害を起こすようになります。

痛風結節は、関節周囲のほかにも耳たぶにできることが多く、にきびに似た白い米粒大の塊ができます。これは尿酸が結晶(尿酸塩結晶)となってこぶのように腫れてきたものです。

最近では痛風が早い時期から治療されるようになり、痛風結節をみることは非常に少なくなりました。

痛風腎[つうふうじん]、腎臓結石[じんぞうけつせき]などが現れてくる

痛風が進行して慢性化すると、関節の障害以外にも生命をおびやかすような内臓障害がみられてきます。もっともおかされやすい臓器は尿酸を排泄[はいせつ]する腎臓で、腎臓機能の荒廃が起こってきます(痛風腎*)。また、尿酸は酸性溶液では溶けにくく、肉食を好む痛風患者では尿が酸性に傾きやすいことから、尿酸を主成分とする腎臓結石ができやすくなります。痛風でない人に比べて、痛風患者では3〜5倍も腎臓結石を起こす頻度が高いといわれます。

このほかにも、痛風では高血圧、糖尿病、高脂血症といった動脈硬化を促進する病気の合併が多くみられます。

痛風腎

痛風患者にみられる腎障害で、腎臓に尿酸塩結晶が沈着していることが特徴です。長期にわたる高尿酸血症、それに伴う尿中尿酸濃度の増加と高血圧の存在が、その発症に深く関与していると考えられています。

痛風治療の原則


痛風の治療では、耐えがたい関節の痛みをできるだけすみやかに軽減させるための治療と、痛風の基礎疾患で腎[じん]障害や動脈硬化性疾患とも関係する高尿酸血症の是正、という2つの面から行われます。また、合併症がある場合は、その治療も同時に行っていかなくてはなりません(図6―5)。

発作時は痛みや炎症の対症療法を行う

患部を安静にして肉食、飲酒を控え、できるだけ早く鎮痛薬を服用することが肝心です。注意したいのは、痛風関節炎は尿酸値の急激な変動によって引き起こされ悪化するということです。尿酸値の急激な増加はもちろんのこと、急激に低下する場合も発作が起こりやすくなります。したがって、関節が腫れ上がって痛むときには、できるだけ尿酸値を変動させないようにして、痛みをとることに専念することが大切です。

痛風発作には、鎮痛作用と消炎作用の強力なインドメタシンのような非ステロイド系抗炎症薬を、通常使用する量の2〜3倍多く使用します。痛みが軽くなってきたら使用量を減らし、痛みが消えたら中止します。胃腸が弱い人では坐薬[ざやく]がすすめられます。発作の起きる関節にもよりますが、足の親指の場合には、治療開始が早ければ数日で、治療開始が遅れても2週間以内には痛みも腫れも消失します。痛風が増加してきた1970年代ごろまでは、発作時にはコルヒチンという薬が痛風の特効薬としてよく使用されていましたが、腹痛、下痢などの副作用が多いため、大量使用することはなくなりました。

尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬

痛風の人では関節炎が治まってから、 高尿酸血症の治療に入ります。また、痛風を起こしていない高尿酸血症の人でも、程度によっては薬物治療が必要となります(図6―6)。尿酸を下げる薬剤には、作用の違う2つのタイプがあります。ひとつは、尿酸の産生を抑える薬(アロプリノール)です。もうひとつは、腎臓[じんぞう]から尿酸の排泄を増加させる作用をもつ薬(プロベネシドとベンズブロマロン)がよく使用されます。

尿酸排泄促進薬は、腎臓のはたらきが悪い人では尿酸低下作用は期待できません。また、腎臓結石を起こしている人では、尿酸排泄が増加することで、さらに結石形成の危険性が高まりますから使用しないほうがよいといわれます。

尿酸クリアランス検査と尿酸排泄量の検査により、腎臓での尿酸排泄能力の低下によって高尿酸血症となっている人では尿酸排泄促進薬を選び、体内での尿酸産生が過剰のために起こっている人ではそれを抑制する薬を使うことがすすめられます。

いずれの薬を使う場合でも使いはじめは、発作が起こりやすいので、痛みがなくてもしばらくはコルヒチンかインドメタシンなどを少量常用するか、予感を感じたらすぐ服用できるように携帯しているとよいでしょう。

尿酸値が6mg/dL以下に安定して6カ月もすると、薬を服用している限りは発作は起こらなくなります。ただし、尿酸降下薬は、体質改善の薬ではありませんから、中断すれば1週間ほどで尿酸値は治療前のレベルまで戻ってしまいます。

尿をアルカリ化する

血中尿酸値を是正することのほか尿をアルカリ化するように努めることも腎臓結石の防止には大切です。この目的には以前は重曹[じゆうそう](重炭酸ナトリウム)をよく使用しました。しかし、重曹はナトリウム含有量が多く高血圧には悪影響を及ぼすことから、最近では、クエン酸塩製剤が使用されるようになっています。特に尿酸排泄促進薬を使用しているときは、尿中に尿酸が多くなっているので、アルカリ化と尿量の増加を心がけなければなりません。

薬の副作用について

尿酸生成抑制薬のアロプリノールと尿酸排泄促進薬のベンズブロマロンは、長期間服用しても比較的安全性の高い薬剤ではありますが、特異体質の人が服用すると重篤な副作用が起こることがあり、注意を要します。

アロプリノールでは1カ月以内に発熱、皮疹[ひしん]、肝障害、腎障害[じんしようがい]などがみられる中毒症候群が、ベンズブロマロンでは6カ月以内に劇症肝炎が起こることがあります。

いずれも早期に薬剤を中止すれば回復しますので、服薬を開始して1年間ほどは1カ月に1回は血液検査をする必要があり、からだの調子がおかしいと気がついた場合は、すぐに医師に相談することが大切です。

(藤森 新)