心筋梗塞[しんきんこうそく]
冠動脈の途絶で心筋が壊死[えし]に陥る
冠動脈の内腔[ないくう]が、動脈硬化でもともと狭くなっているところに、粥腫[じゆくしゆ]*内に出血が起こったり、その部分が破綻してそこに血栓[けつせん](血液が凝固した塊)ができるなどして内腔を閉塞[へいそく]する事態を生じ、血流が一定時間以上とだえると、その血管で養われていた部分の心筋は、酸素や栄養が絶対的に欠乏するため、壊死に陥ります。壊死とは、組織が破壊されて死んでしまう状態です。これが急性心筋梗塞という状態で、ほとんどの場合、急激に発症します。
粥腫
動脈硬化の初期段階で、血管の壁にできたおかゆ(粥)のようにやわらかい腫れものです。コレステロールなどの脂肪や線維などが詰まっています。この部分がやがて破綻し、血栓(血液の塊)がついて血管内腔を狭めたり、末梢に流れるなどして、狭心症や心筋梗塞を起こします。
心筋梗塞の痛みの特徴
もだえ苦しみ数時間にも及ぶ激痛
突然の前胸部激痛で始まります。この痛みは、狭心症のときの痛みよりもはるかに強いもので、速効性硝酸薬の効きめはほとんどなく、死の恐怖感や強い不安感、あるいは絶望感にとらわれます。また、狭心症の発作のときのように、安静にしてじっと耐えることができず、顔面蒼白になり、冷や汗を流してもだえ苦しみ、時には転げ回るという状態になります。
痛みの持続時間の長いことも急性心筋梗塞の特徴で、30分以上から数時間つづき、時には数時間から数日にわたって断続的に起こることもあります。
痛みを感じる場所は、狭心症と同じく胸の中央部が大部分ですが、左胸部や前胸部全体、あるいはみぞおちの部分などが痛むことがあり、左肩や左腕、首や下顎[したあご]、右肩などに痛みが放散する(響く)場合もあります。
発作のときに、吐き気や嘔吐、便意をもよおすなど、胃の病気や胆石症などの上腹部の病気とまぎらわしい症状が出ることもあります。
なお、高齢者ではこのような痛みを訴えることが少なくなり、60歳代62.5%、70歳代38.5%、80歳代29%にすぎなかったとする報告もあります。呼吸困難、ショック、意識障害などで見つかる症例が増えるので、十分に注意が必要です。
運動とは直接関係ないことが多い
急性心筋梗塞[しんきんこうそく]の発症は、労作狭心症[ろうさきようしんしよう]のように体動時に起こることは少なく、むしろ安静時や就寝中、あるいは日常の軽い労作時に起こります。不安定狭心症のかたちをとり、注意してみれば前ぶれのあることが多いのですが、時には突然起こることもあります。
狭心痛以外に起こる重大な症状
急性心筋梗塞では、心筋壊死[しんきんえし]が起こった部位や範囲によっては、いろいろなタイプの危険な不整脈が起こり、そのために突然死(急死)することが少なくありません。心筋梗塞が恐れられる大きな理由のひとつはここにあります。
また、壊死した心筋は収縮できず、そのために血液を全身に送り出せなくなると、ショック(心原性ショック)を起こすことがあります。ショックになると、手足が冷たくなり、冷や汗、チアノーゼ、脈拍は微弱でおもに頻脈、血圧は下がって測定できず、意識障害をきたす重篤な状態となります。
この心原性ショックも心筋梗塞の大きな死因を占めます。また、ショックまで至らなくても心筋収縮不全による肺うっ血を起こして、呼吸困難や心臓ぜんそく、むくみが起こる場合もあります。
心筋梗塞の治療
CCUのある施設で集中治療を受ける
心筋梗塞が起こったときはもちろん、心筋梗塞[しんきんこうそく]の疑いがあるときも、がまんしたり、自宅で家庭療法をしたりしてはいけません。ためらうことなくただちに、最寄りの心臓専門の設備*のある病院に入院することが第一です。現在では、早ければ早いほど、集中治療を受けることによって、急性心筋梗塞の救命率はずっと上がってきています。
心臓専門の設備
CCUと呼ばれる冠動脈疾患の集中監視と治療体制を備えた施設、あるいは、それに準じた施設を指します。
急性期の治療対策の基本
心筋梗塞[しんきんこうそく]急性期の治療対策として、入院後ただちに冠動脈造影を行い、PCIやICTなどの冠血行再建術を行います。同時に、致命的となる危険な不整脈や心原性ショックなどの合併症の予防、治療も行います。
急性心筋梗塞では、最初の1週間が非常に危険な時期で、特に数時間から1〜3日のうちに致命的な事態が起こり死亡することが多いのです。初期に専門施設での集中管理による適切な処置や看護が必要なのはそのためです。
一般に、発症してから1カ月以内の急性期は、心身ともに安静にすることが必要で、特に最初の数日間は絶対安静を必要とします(表4−8)。

回復期から慢性期の血行再建療法
急性期を乗り越えれば、回復期から慢性期(かなり安定した状態)になるので、冠動脈造影を行って、PCIやCABGの適応を考えます。
一般に、3枝(冠動脈の3つの血管)病変ならCABGが、それ以下ならPCIが行われますが、器材や技術の進歩はめざましく、患者にとって侵襲の少ないPCIの適応は絶えず拡大しつつあります。
また、心室瘤[しんしつりゆう]が心不全、不整脈や動脈塞栓[どうみやくそくせん]の原因となる場合、外科的に心室瘤を切り取ってしまう心室瘤切除術が行われることがあります。
そのほか、心筋梗塞[しんきんこうそく]の合併症として弁を支える乳頭筋の断裂で起こった僧帽弁閉鎖不全に対しては、人工弁置換術、中隔穿孔[ちゆうかくせんこう]に対してはその閉鎖術が行われます。
関連する診療科目は以下の通りです。
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