慢性閉塞性肺疾患[まんせいへいそくせいはいしつかん](COPD)

COPDとはどんな病気か


COPD[シーオーピーデイー]という病名を聞いたことがありますか。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、わかりやすくいうと、慢性気管支炎、肺気腫[はいきしゆ]または両者の併発により引き起こされる、閉塞性換気障害[へいそくせいかんきしようがい]を特徴とする疾患です。この閉塞性換気障害は、慢性気管支炎による気道病変と肺気腫による肺胞病変とがさまざまに組み合わさって起こります。通常、COPDによる閉塞性換気障害は、ゆっくりと進行し、不可逆的です。

慢性気管支炎は、慢性または反復性に喀痰[かくたん]が増加する状態で、このような状態が2年以上つづき、1年のうち3カ月以上、大部分の日に認められる状態です。肺気腫は、終末細気管支より末梢[まつしよう]の気腔[きくう]が異常に拡大し、肺胞壁の破壊をきたす病態です。しかし、気流閉塞のない肺気腫または慢性気管支炎は、COPDとはいいません。

以上をわかりやすく図形にしたのが、図3―8です。

COPDの危険因子


喫煙が、COPDの危険因子になることは、疑いのない事実です。実際、喫煙により閉塞性換気障害[へいそくせいかんきしようがい]が進行し、その程度はたばこの本数に依存します。喫煙開始年齢が若年であるほど進行しやすいのも事実です。

喫煙者の20〜60%は喫煙に感受性があり、65歳になると生活に障害をきたす程度の閉塞性換気障害を起こします。

喫煙はCOPDのリスクの80〜90%を占めます。男性の慢性気管支炎患者のうち、非喫煙者は5%のみでした。COPDで死亡した症例のほとんどは喫煙者であり、非喫煙者は10%以下でした。

さらに、喫煙はCOPDの原因となることが明確にされています。解剖で、肺を取り出して調査したところ、非喫煙者では、60歳以上のわずかな症例で軽度の気腫性変化があるにすぎないのに、喫煙者では、そのほとんどに認められ、4分の1の症例では、高度の肺気腫[はいきしゆ]が認められました。

COPDが起こるメカニズムは


喫煙は、気管支や肺に慢性の炎症を引き起こします。詳細な機序は省きますが、白血球の一種である好中球が肺に集まってきて、その好中球からたんぱく分解酵素や活性酸素などが放出されます。これらが、気管支や肺胞の上皮細胞、肺の血管壁を破壊します(図3―9)。

その結果として、気道からの粘液分泌が増加し、気管支表面にある腺毛の機能が低下します。これが、慢性のせきと喀痰[かくたん]といった症状を起こします。病気がさらに進行すると、末梢の気管支が閉塞[へいそく]し、肺胞と肺血管の破壊による、肺のガス交換能力の低下・低酸素血症・高炭酸ガス血症が起こります。やがては、肺高血圧症や肺性心となります(図3―10)。

COPDの自覚症状は


COPDの自覚症状としては、以下のものがあり、その多くは喫煙者です。

(1)慢性気管支炎(進行性に悪化する呼吸困難)

(2)慢性のせきと喀痰[かくたん](喀痰は粘性で、悪化時には膿性[のうせい])

(3)時に喘鳴[ぜんめい]、発作性のぜんそく症状

呼吸困難の程度は、さまざまであり、その程度を表わすフレッチャー・ヒュー・ジョーンズの分類があります。これを参考にして、ぜひ、自己評価してみてください(表3―3)。

COPDの治療


最初の治療は禁煙

COPDは、いったん発病すると非可逆的であり、内科的治療法では根治は不可能です。したがって、病気の進行を遅らせることが最大の課題になります。そのための治療法はいろいろありますが、もっとも有効なものは禁煙です。

禁煙を実行することにより、COPDのみならず、さまざまな病気にかかる確率が低下します。

また、すでにCOPDにかかっている方も、その進行を遅らせることができます。1秒量は、喫煙の有無にかかわらず、加齢とともに減少していきますが、喫煙者も、禁煙した時点から、その減少速度も鈍くなります。

COPDの薬物療法

日本呼吸器学会では、「COPDの診療ガイドライン」を作成して、病期別あるいは重症度に応じた治療や管理法の指針としています(図3―12)。

薬物療法は呼吸困難を軽減して、運動能力を高めることを目的としています。そのためには、気流閉塞[きりゆうへいそく]の改善、呼吸筋力の向上、気道クリーニングの効率化に役立つ薬物を使用します。

原則的には各病期に対応するステップ1〜3を選択して、治療を開始することになります。症状の改善が十分に得られない場合には、次のステップに進みます。

治療法を選択する場合には、常に主治医の指示に従ってください。

COPD、特に慢性気管支炎型の場合、喀痰[かくたん]の量が増加し、粘稠[ねんちゆう]になることが知られています。そこで、ムコソルバン、ムコフィリン、ダーゼン、ムコダインなどの去痰薬[きよたんやく]を使用します。

COPDの急性増悪のおもな原因として、気道・肺感染症があります。

インフルエンザワクチンの高齢者における感染防止効果は、30〜70%と若年者に比べて低いのですが、重症感染症による死亡率は、50〜70%に減少します。したがって、毎年、秋には、ワクチンを接種したほうがよいでしょう。

肺炎球菌ワクチンは、現在、感染の原因となる菌型の80%以上を含む多価ワクチンが使用できます。1回の接種で5〜10年の効果が期待できます。

重症になったら酸素療法が必要

COPDに有効な治療法を全て行っても、低酸素血症または低酸素症が継続する場合には、酸素療法を開始しなければなりません。

長期の在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)は、生命予後を改善し、肺高血圧症と肺性心の発病や進行を阻害します。また、運動時や睡眠時の低酸素血症を改善し、うつ状態や精神神経機能の改善をもたらします。これらの結果として、入院治療の必要性を低下させます。